文部科学省へ要望書提出

子ども全国ネットのメンバー9人が12月9日、文部科学省を訪れ、「放射能から子どもを守るための対策」について、中川文部大臣、森文部副大臣に要請を行いました。

この申し入れに関しては、放射能対策に取り組む議員有志である福島みずほ議員(社民党首)、柿沢未途議員、川田龍平議員(みんなの党)、に御同行いただき、池坊保子議員(公明党)、原口一博議員、田島要議員(民主党)のご尽力により実現いたしました。


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私たち、子ども全国ネットでは、文部科学省に申し入れを行うために10月から準備を進め下記の提案書として提出。(提案書はこちら) 

子ども全国ネットの伊藤より、「福島をはじめとする学校給食の安全を徹底するために、全都道府県で食品計測器の購入を実現」「とにかく測定して公表することの早期拡充」「今回の、40ベクレルという発表は評価できるので、ぜひここを第一歩に、子どもの内部被曝を防ぐための学校給食の安全を求めること」「福島の子どもたちには安全な給食だけでなく、定期的保養、長期保養に取り組んでほしい」と要望の概要を中川文部大臣にお伝えし、石川より手渡しました。 その後、中川文部大臣および、森文部副大臣に時間をとっていただき、丁寧なご回答を頂きましたので、下記に一部を記します。

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中川大臣:
限られた時間のなかですが、ひとこと私から皆さんへ、お礼のあいさつをさせていただきたいと思います。日頃からみなさんには、「子どもたちをどう守っていくか」また、「子どもたちの成長に、我々大人がどう責任をとっていくか」ということに対して、さまざな示唆をいただいております。それに関しまして、心よりお礼申し上げたいと思います。森副大臣も、みなさまの仲間として、これまでずっと活動を続けてきておられ、今回、文科副大臣として尽力できるということは、鬼に金棒だと心強く感じております。皆さんから提言いただいた内容に関しては、後ほど森副大臣からお話いただくとして、まずは私自身の思いや問題意識をお話しして、冒頭のご挨拶とさせて頂きたいと思います。

実はこの間、福島県の佐藤知事とお会いしました。福島は非常に厳しいなかで、復興というフェーズに向かって進もうとしているわけです。佐藤知事が、もっとも危機感持っておられることは何かと申しますと、「子どもたちが帰ってきてくれない」ということです。もちろん、これは親御さんも含めて、ということになります。そのうえ、まだまだ人口が減少をしていくという点でも心配をしておられます。これがどういう形で止まって、どいういう形で福島の元気を取り戻せるかということについて、まだ答えが見つかっておりません。佐藤知事は、しっかりした基盤ができないという焦りとともに、危機感を持っておられました。

ポイントになるのは、やはり子どもの「安心・安全」をどう確保するかということだと思います。そのためには、子どもたちがどういう状況に置かれているかということを、まずはみんなが知ることができる状況を作ること。つまりモニタリングですけども、モニタリングしたものを表に出して、「現状はこうなんだ」ということを認識したうえで、みんながそれを判断できる状況をつくらねばならないと思います。そのためには、できる限りのモニタリング調査、そして給食の安全性を確保すること、さらには学校や通学路を優先して除染をしていくこと。そういったことを順次始めています。こうした一連の政策を遂行していくなかで、子どもたちがどういう状況に置かれているかが、みなが分かる状況にする。さらには、どう基準を決めて行くかという議論をする。こうしたことがトータルで実現していくことによって、各々の判断につながっていくのだと思います。我々は、こうした政策に精一杯取り組んでいく所存です。本日は、貴重なご提案をいただいて誠にありがとうございました。これをしっかり受け止めさせていただいて、他の省庁とも連携をとりながら進めていきたいと思います。(中川文科大臣退出)

* * 意見交換 * *

森副大臣:
今日はわざわざ文科省までお越し頂きまして、ありがとうございます。先ほど中川大臣からもあいさつがありましたように、みなさまの活動が政治を動かしているということで、心から敬意を表したいと思います。何よりも、子どもたちを放射能から守るということが、私自身何より重要であると考えておりまして、それを念頭にこの間、活動させていただきました。9月からは文部科学省副大臣という仕事を拝命したしまして、まだスタートしたばかりではございますが、さまざまな政策を遂行してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。では、ご提案いただいた内容に関してまして、ひとつずつご回答してまいりたいと思います。

要請【1】 学校、幼稚園(保育園)における食材選定、給食検査を徹底すること
① 47 都道府県において、学校、幼稚園(保育園)の給食の食材調査、および、事後の給食まるごと調査を推進していく際、各自治体への支援を含め、文科省からの安全対策指導を徹底すること。現状、17都県が補助金交付対象となっているが、日本における発達した食品流通網や、汚染物質の拡散(瓦礫受入による汚染拡大、汚染堆肥などの汚染製品の拡散など)を鑑みて、47 都道府県を補償交付対象とすること。

森副大臣(回答)
第三次補正におきまして、学校給食の事前の食材検査の予算額一億円が成立しましたので、要項を各自治体に配布し、申請を受け付けているところです。事業実施にあたっての留意事項につきましては、子ども全国ネットのHPにもすでにアップされていますようなので、本日は配布しませんが、内容につきましては、各自治体に連絡をさせていただいたとおりでございます。先ほど、中川大臣からもお話がありましたが、他省庁との連携ということにつきましては、この事業を予算計上するにあたって、農水省、厚労省からご了解いただいたきました。実施要項に付けました留意事項のところで、検査機器の検出下限値の数値40ベクレルということと、それから40ベクレルを下限としって計測した場合に、それ以上の数値を湿す食材があった場合には、その食材をのぞいて調理をするなど、安心の目安として例示的に示させて頂きました。

それから47都道府県においても給食の検査してほしいというご要望ですが、まずは放射能の拡散状況をより考慮しなければならない地域として、東北および関東、甲信越、静岡をふくめ17都道県からスタートするということにさせていただきました。

しかし、来年度の概算要求におきましては、この学校給食のモニタリング事業について、すでに予算要求をしております。事前の食材検査については福島県内をさらに詳細に、各市町村ごとに学校給食の事後検査(丸ごとミキサー検査)を行うということ。それから、福島県以外の46都道府県においても、都道府県単位で同様の事後検査を実施したいということで、概算要求で出させていただいております。どのくらいの予算がつくのか、これはまだまだ最終の詰めの段階でございます。ご指摘がありましたように、食品は全国で流通するものですから、そうした意識を持って学校給食の安全確保のための事業を拡充すべく取りくんで参りたいと思っております。

要請【1】
② 放射能の検出機器の扱いについては、食材検査の検出限界値以上に、まるごと検査に関しては精密で低い下限値を求めること。さらに核種別検査なども検討すること。また、各自治体には、網羅性を鑑みた検査方法とオペレーションを確立するよう指導すること。

森副大臣(回答)
これに関しては、先ほど申し上げました事業の留意事項のなかに、同趣旨のことが書いてあると思います。また今後実施します事後検査に関しては、ご指摘のとおり、より精密で低い値でということについても検討しております。

要請【1】
③ 学校給食は何より内部被曝ゼロを目指すことを提言し、予防原則に基づく対策を講じること。毎日食する給食に関しては、厚労省から示される基準値ではなく、ゼロベースを目標とすること。また、毎日給食で出される牛乳については、心配の声が多数上がっているにもかかわらず、対策や情報開示が徹底されていない。子どもの健康を最大限考慮した「検査方法、検出限界、情報開示」を徹底するよう、乳業業界やメーカーへの指導を求める。同様に、給食食材の品目数の約3~4割を占める加工食品に関しても、その多くが検査対象となっておらず、各メーカーへの国からの指導を求める。(武蔵野市、世田谷区、千代田区の牛乳検査においてセシウム検出)

要請【1】
④ 検査結果は、すみやかに、誰もが取得しやすい方法で公表すること。また、開示内容については、「不検出」と明記するだけでなく、下限値や測定条件、参考値なども併記すること。※別添資料「市立小中学校給食食材の放射性物質検査の結果について/武蔵野市教育委員会」参照。※参考値⇒定量下限値以下の数値が検出された場合は、参考値として公表をすること。

森副大臣(回答)
牛乳の問題ですが、昨日も世田谷区の保坂区長から、ご要望をいただきました。とにかく牛乳は毎日飲むものですから、東京都の牛乳の納入業者とのやりとり等もお聞きし、農水省や厚労省とも連携をいたしまして、情報開示するということについて調整させていただければと思っております。また一方で、食品全体の安全に関しては、今大詰めのところにきているとうかがっております。その状況もふまえて、安全が確保されるように努力をしてまいります。今回の「安心安全のための学校給食関係整備事業」によって調査した情報については、すみやかに市町村や学校のホームページに掲載することによって、品目名や測定結果、検出限界等、すみやかに公開を求めております。これに関しましては、発出した要項につけました留意事項の最後のところに、「公開してください」ということを明記させていただきました。

要請【1】
⑤ 保護者も納得する安全管理体制ができるまで、弁当持参や牛乳拒否について、選択制を許可するなどの柔軟な対応を検討すること。

森副大臣(回答)
このことにつきましては、すでに11月21日に事務連絡で各都道府県学校給食の担当に対して、以下のような文言において保護者のみなさまのご要望に配慮していただけるよう通知しております。

「放射性物質等に対する不安から、保護者等が弁当や水筒の持参を希望する事例もあることから、その際には、十分な説明と配慮をお願いいたします」

ですから、すでにそのように対応されていると思っておりますが、もし問題があるところがございましたら、ぜひお知らせいただきたいと思っております。

要請【2】土壌調査を徹底して行うこと
① 現状の調査ではまだ不十分であり、特に福島については2キロメッシュではなく、生産者単位での調査も実施するよう検討すること。 地形や地質なども考慮すること。

② 関東を含む広域にストロンチウム、福島・近隣はプルトニウムなどが検出されていることから、核種別検査をより詳しく実施し、すみやかに公表すること。

森副大臣(回答)
これにつきましては、三次補正で、放射性物資の分布状況を調査するために必要な経費が認められております。具体的に申しますと、専門家のご意見を踏まえまして、今月1日から追加調査を実施しております。これまでに比べますと、調査範囲や調査核種を拡大して、実施することとしております。この間、大変ご批判をいただきました文科省のこのモニタリングですが、最初は体制が整っていなかったことも一因としてございます。事故の混乱の中でいろんな問題があったかと思いますが、私が文科省に入ったから言うわけではないのですが、対策班が毎日24時間体制で努力をしてくれておりまして、時間はかかりましたがモニタリング体制が整ってまいりました。今さらに詳しい調査に着手しておりますので、ぜひご理解いただきたいと思いますし。またお気づきの点がありましたら、議員を通じてご要請いただきまして、できるだけ対応させていただければと思います。

また、放射性物質の沈着状況をより正しく把握するために、走行サーべーを使って空間線量率を測定することに致しております。京大で開発した「「KURAMA」という装置を車に搭載して測定するのですが、より効率的にしっかりと計測できるようにということで、詳細に行っております。それから放射性ストロンチウムにつきましては、今までは福島第一原子力発電所から100キロ圏内の計測ということでしたが、100キロ圏外におきしましても、放射性セシウムの沈着量が高い土壌に関して実施をするほか、放射性プルトニウムについても、調査範囲を福島第一原子力発電所から100キロ圏内にまで拡大するということでございます。新しい調査結果をまとめた際には、早急に公開してまいります。今申し上げましたことは12月6日に文科省で報道発表しております。

要請【3】年間被曝限度量1mSv の法令を順守すること 外部被曝と内部被曝を足して1mSv/y とするこれまでの被曝限度量を緩和することなく、 子どもたちの感受性の高さに配慮した対策を講じること。内部被爆と外部被曝を分けて 計算することを改めること。

森副大臣(回答)
学校における除染に関する総合的な方針につきましては、8月26日に原子力災害対策本部が決定した除染に関する緊急実施基本方針において示されております。文部科学省といたしましても、その方針のもと、学校の校舎・校庭等において、児童・生徒が受ける線量を内部被ばく・外部被ばく合わせて原則年間1ミリシーベルト以下とすること等を内容とする通知を8月26日付けで発出いたしました。現在、さまざまな除染対策がすすめられているところでございます。なお、今後のことについては、細野大臣のワーキンググループで検討されているところですし、柿沢議員もこの間チェルノブイリに行かれ、私もその後行ってまいりましたので、チェルノブイリの経験を活かして、「本当に必要なこと」を実施してまいりたいと思います。チェルノブイリ原発事故後の25年間振り返ると、さまざまな試行錯誤の中で「すべきではなかった」こと、反対に「もっとすべきだったこと」いろんな反省があったと思います。そんな経験を活かしながら、実施してまいりたいと考えております。これは、科学的な議論だけでは、決められないことだと思います。みなさんが納得できるように、科学と、精神的な影響、社会的、経済的、政治的な影響などさまざまな要素を入れて、みんなで話し合って納得できるような対策を講じていくことが重要なんだと思っています。

要請【4】東日本全域の学校、幼稚園について学校敷地内での放射性物質計測をきめ細かく実施し、規制値以上の場所については、学校・幼稚園行事、体育授業の屋内配慮、除染実施など、 子どもたちを放射能から守るあらゆる対策を速やかに実施するよう、地域格差なく、 その対策を講じること。また、各自治体には、危機管理意識の徹底を図ること。

森副大臣(回答)
これに関しましては、すでに福島県内のすべての小中学校に積算線量計を配布しておりますし、福島県以外についても、校庭と園庭の空間線量率が毎時1μシーベルト以上の場合は、設置者の希望に応じて積算線量計を配布することになっています。さらに福島県においては、運べるモニタリングポストの整備や、サーべーメーターの配備を行うとともに、県内の学校、幼稚園、公園等に、リアルタイム放射線監視システムを納入する予定です。

それから全国に関しても、モニタリングポストの増設や、環境資料の分析装置の整備等に関わる支援を行っているところです。これは福島県内問わずに、線量率が毎時1μシーベルト以上の学校に対しては、校庭、園庭の土壌に関する除染や線量低減策への財政的支援を行っています。それから、福島県健康管理基金に要する経費962億円が来期要請、措置をされておりまして、そのなかには、通学路や公園等の除染に対する財政的支援が含まれております。また、東日本大震災の復旧・復興予備費2179億円の中に、いわゆるホットポットの除染に関する経費が含まれております。また、中川大臣肝入りで、文科省としては、学校内で局所的に線量が高い場所を把握するための測定のてびきを公表したり、福島県内の子どもの生活環境の除染に対する専門家の派遣を行うなどの取り組みを行っていまして、引き続きこのような対策をとって参りたいと思っています。

要請【5】福島の学校教育環境の改善、給食における安全確保をはかること
① 子どもたちが高い放射線量の中を通学・通園し、屋外での活動を規制されるような環境での教育は、子どもたちが等しく教育をうける権利を侵害している状態であると考える。 子どもたちがのびのびと健やかに学校生活を送ることができるよう、学校(幼稚園・保育園)・学年・学級単位で安全な場所へ疎開させるなどの対策を講じることで、子どもたちの教育を受ける権利を保障すること。

森副大臣(回答)
現状は計画区域、計画的避難区域等以外の地域における避難は、政府としては「必要ない」というふうにされているわけですが、先ほど申し上げました低線量被ばくの影響に関するワーキングチームでも今いろんな議論がされているところであります。文部科学省としては、子どもたちの心身の影響およびリフレッシュをはかるための「リフレッシュキャンプ」を行うこと。これは非常に重要な事業だと認識しておりますので、すでに今年の夏休みに国立青少年教育施設で実施しました。それからオータムキャンプ、ウインターキャンプも本日詳細を発表させていただきました。来年度の概算要求におきましても、引き続きリフレッシュキャンプ事業を文科省として実施するということを要求しております。

私もチェルノブイリ(ウクライナ)に行きまして、現地の皆さんからいろんなお話をお聞きしました。その報告は、私のブログにもアップしておりますのでご覧ください。

ウクライナは原発事故以前から、集団営農という旧ソ連の体制の下で、子どもたちを集団で預かって、朝・昼・晩3食給食を提供するということをやっていました。また、夏休みや冬休みには、長期にわたって保護者抜きで集団キャンプも行っていた。事故の前からそういうことをやっていたという体制もあり、事故直後には数年間にわたって、夏休み3ヶ月、冬休み1ヶ月、リフレッシュキャンプを開催されていたそうです。私も、こうした取り組みはとても重要だと思っております。文部科学省で、現時点で実施しているキャンプは規模もまだまだ小さいものですが、引き続き拡充できるようにがんばっていきたいと思っております。また福島県においても、各自治体で対象を拡充した取り組みをされている自治体もありますので、このような事業がうまく実施できるよう支援をしていきたいと思っています。

要請【5】福島の学校教育環境の改善、給食における安全確保をはかること
② 福島における給食食材の選定は、外部被曝線量の高さや、(生産者との関係で)県や自治体では厳しい方針が出しにくい状況を鑑みて、国からの方針を通達すること。地産地消の名の下、福島の子どもたちが他の地域より、なお一層、内部被曝を受けやすい現状にあることを認識し、早急に改善させるよう指示をすること。

森副大臣(回答)
今回の「安心安全のための学校給食環境整備事業」は、まさに文科省として、まずは福島県を重点的にやっていきましょう、という意識の元にスタートさせていただいております。 全国のお母様がたからは、全国でも是非実施してほしいというご要望をいただいておりますのえ、冒頭で説明させていただいたように教育委員会や学校などに対して、出荷制限等の情報に留意するよう、注意喚起をしておりますし、また今回の事業が速やかに実施されるように全力で支援していきたいと思っています。

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~森文科副大臣の要望書に対する返答がいったん終わり、ここからは自由な意見交換の場となりました~

福島みずほ議員:
給食について概算要求を挙げている、ということは良いのですが、概算要求だと来年の4月からということになるので開始が遅くなってしまいます。もともと、予備費が8000億くらいありますので、この給食の検査を前倒ししてやっていただきたいと思います。それと、給食の事後検査(まるごと検査ミキサー検査)なんですが、事後に「入っていた」といわれるより、事前にできないのかと思いますが、そこはいかがでしょうか。

森文部副大臣:
まず給食の事後調査に関しては、すでに省内の予算等で実施できないかということで、事業の準備検討を進めております。できるだけ早く、どのような形で、どのような範囲でできるのか、発表させていただきたいと思っております。

また、事後検査に関しては、専攻して実施している自治体をみますと、どちらかというと安心につながるのかな、という気がいたします。もちろん事前検査がより広範囲に、かつ詳細にできるといいのですが、なかなか現実的に難しい部分がありまして、そこはより現実的に実施可能なやり方でやっていく方法で考えたいと思います。丸ごと検査を実施して、その結果が分かることによって、現場の方に対してもより注意換気につながるのではないかと思っております。そこはご理解いただければと思います。

柿沢議員:
保護者の皆さんが何を求めているかというと、給食等子どもが口にする食材に関しては、「放射性物質がゼロのものに限定される」ということ、だと思うんです。森副大臣もおそらく同じような考え方で、まずはこのまるごと検査をやってみて、いったい実態はどうなのかということを明らかにすれば、これを解消するためにはどうすればいいか、と流れになる。だとすると、この事業をはじめるのは、なおのこと早いほうがいいということになるのだと思います。そういう意味では、全国一律用意ドンではじめる必要はなくて、実態をあきらかにする意味では、パイロット的に一部の地域で検査をやって学校給食に使われている食材は、このくらいの放射性物質が含まれている状態なんだということを明らかにする。それが第一歩なんだろうと思います。もうひとつは、食材に関して、子どもや妊婦さんに関する特段の配慮ということが求められいて、ここを数値設定をしていくのかということを決めることが何よりも大事だと思います。

もうひとつは、今子どもたちの移住や疎開に関して、「除染をしたら、ここはきれいになるからとどまっていなさい」と。逆にいうと、「疎開、移住をしたい」と言うと、支援の対象から外れますよ、ということになってしまっていると。こういう状態になっていることが、一部の非常にセンシティブな方々を苦しめている、ということになっていると思うんです。そういう意味で、福島で子育て中の方に関しては、できるだけそれぞれの考え方に応じた選択の自由を与えてあげることが大事なのではないかと思っております。て、実際にどういう影響があるか分からないわけですから。例えば、子たちが転校した場合はどうなるのか、といったことに一定の答えがないと、ただ食材の問題だとか、空間線量の問題であるとかだけ対処療法的に対処しても、全体の安心は確保できないのではないかと思います。

森文科副大臣:
まず給食の検査については、できるだけ早く始めて実態を知るということが重要であると思っています。特に、福島県など心配される地域を専攻させるということが大切です。実は政務三役の中では、「全国一斉に検査を始める」ということを強く主張していたのですが、逆に中川大臣から「できるだけ早く実施をしよう」という示唆を頂きまして、今準備を始めているところでございます。もちろん「ゼロベクレル、1ベクレル」を目指したいのです。もちろん、お母様の放射性物質に対する受け止め方には幅があるわけですけども、「危ないといわれているものは食べさせたくない」というのが親心ですし、小さい子どもたちの感受性を考えますと、できるだけゼロに近づけていきたいと思います。ただ、現実的に実施しうることを丁寧にやっていきませんと、数値ばかり専攻してもかえって混乱を招くのではないかと思いますので、目標はそういうところを目指しつつ、現実も見て、着実に、できるだけ迅速に、進めていきたいと思っております。

それから、最後のご指摘の部分は、私のチェルノブイリの視察報告書の最後のまとめに同じ考え方でまとめさせていただいております。ですから、これは全体的な政府の考え方、文科省としての考え方ではございませんけども、チェルノブイリを視察してきたその参加者、同行者含めて会議をしまして、意見としてまとめたものをオープンにさせていただいております。 私としましては、「新たな場所で生活を始めたい」という方は、できるだけ早く道筋が見えるようにしたいし、また、除染が進んで「これくらいなら納得して、気をつけつつ住める」という方は、安心して住めるようにしていきたい。つまり選択できるようにしたいと考えています。来年の新学期には、ある程度生活が安定できるようにしたいという気持ちで、いろんな提案等をさせていただいておりますが、なかなか意見集約をはかって、実際に事業を実施するというところについては、かなり時間がかかっております。しかし壁にぶち当たりながらも、一歩一歩進んできておりまして、そういう意味では、この給食の検査が始められたということは、私にとっては相当大きな一歩であると思っています。皆さん方は、「なんて遅いんだ」もっとガンガンやれというお気持ちだとは思うのですが…。

子ども全国ネット 伊藤:
今回17都県が発表されたときに、これはなんとか都県に出してもらわないとということで、ネットワーク団体にも呼びかけましたし、実際に東京都や神奈川、千葉は自治体に持参しました。でもなかなか都県が動かない。9日までの間に、審査して出しますよと即答してくれなかった。これが申請が出なかった場合はどうなるのか、というのが私たちとしては心配だったんです。

東京連合 石川:
私は江東区在住で、江東区と東京都両方に、働きかけを行いました。江東区は、東京都の中でもわりと早く検査機器を購入しよう、という流れでやっていただいたんですが、ふたを開けてみたら検出限界値が非常に高い。合算値でいうと60ベクレルということになってしまっていて…。しかし、今回この事業計画書を出していただいたので、これはすごく良いものを出していただいたと思い、すぐに江東区に持参しました。そして、機器購入に関する提案書を出したところ、やはりこの下限値では問題なんだねということをやっと気づいていただくことができました。というのは、事業計画書では40ベクレルという合算値で表記していただいていると思うのですが、だいたい機器のスペック表を見ると、一核種でしか書いていない。そこを担当職員の方が混同してしまっているという事実はあるというのは、直接の交渉で感じました。そこを文科省の方から、はっきりと、合計でこうだということを出して頂きたいと思っております。

また東京都は、教育庁が一元的にこの問題を扱っているのですが、機器導入にちょっと後ろ向きなようでした。その理由としては、クリアしないといけない検討課題をがすごく多くて、何台購入するのか、オペレーションをどうするのか、そういったことを考えると、財政があるといわれている東京でさえも、人件費や運用費のことを考えて、決定できないという事実があるようです。買う買わないの答えは、別の日にいただくことになっているんですが、東京都でさえもそうなのですから、もっと財政的に逼迫している県などは、機器を購入するというところまで一歩踏み出せないという事実があるのだということが分かりました。地域主権とか、地域主導といわれているんですが、この問題に関しては国内において前例のない事象なだけに、文科省からのトップダウンというのが必要だと感じております。

森文部副大臣:
ありがとうございました。放射能との戦いは始まったばかりです。私たちは子どもたちを、放射能から守らなければならない。これは、私も繰り返し言っているわけですけども、これをもっと政府の方針としてしっかり定着するように、今後も声をあげて、そして行動していきたいと思っています。なにより、文部科学副大臣という仕事を頂戴いたしましたので、一気には難しいですが、私のできうる範囲で、またそれ以上に着実に進めていきたいと思います。

最後にお願いなんですが、被ばくの影響をどう考えるのかについては、専門家の間でも、ものすごく開きがあります。100ミリシーベルト以下なら大丈夫という人や、絶対に1ミリシーベルト以下でないとダメだという人。もちろん、少ないにこしたことはないんです。ICRPもできるだけ低くしましょうと言っています。でも、現実問題として事故が起きた後はは、一気に低くできないので、ある程度皆さんが許容できるところで、徐々に下げていきましょう、と。そこは是非ご理解していただけるように、皆さんからもお力添えを頂きたいと思います。もちろん、ホットスポット、ホットエリアなどについての対策は最優先であると思いますし、また食品に関しては全国に流通しますので、そういう点はしっかりと認識しながら対策を進めていくということが何よりも重要だと思っています。

私も二児の母ですので、これは母親の“勘”と言うのでしょうか。こういう抽象的な言い方をすると申し訳ないのですが、この“勘”を私は大切にしたいと思っているんです。子どもを育てるときに、「これは危ない、なんとかしないといけない」という母親の勘。みなさん、お子さんをお持ちの方も、いらっしゃらない方も、きっとそういう勘を原点として動いていらっしゃると思います。しかし、あまり突出してしまいますと、「大丈夫」と言っている人たち理解していただけず、結果として何も進まないという状況になってしまいますので、そのあたりは是非みなさんにご協力いただきながら頑張って参りたいと思っております。

今日は、皆さん、わざわざこうやって集まっていただいて、要請していただいて、私としても大きな力、そして励みをいただいたと思っております。本当にありがとうございました。今後とも、「子どもたちを放射能から守ろう!」を合い言葉に頑張っていきましょう。 (以上)

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この後、森文部副大臣は、全国ネットを代表して訪れたメンバー9人ひとりひとりとの意見交換を予定時間を超えて設けてくださいました。

また最後には、全国ネットの伊藤より、「きょうはとても有意義な時間でした。こうした場をぜひ今後もお願いしたい」と要望し、福島みずほ議員も「ぜひ定期的に」と添えてくださいました。これに対して、森文部副大臣は、「前向きに検討してくださる」とお返事くださいました。

森文部副大臣が、私たち母親と同じように「子どもたちを放射能から守ろう!」という思いを持ってくださっていることは、何よりの希望です。 私たち母親は、子どもが食べる食材については、あくまで「ゼロベクレル」を目指したい。そして、放射能を気にせずに、外でのびのび遊ばせてやりたいと思っています。

なぜなら、現在、定められている年間被ばく限度量に関しても、食品の暫定規制値にしても、すべて“がまん値”だからです。これを、未来を担う子どもたちに押しつけるわけにはいきません。

しかし、森文科副大臣がおっしゃるように、事故が起きてしまった以上、一気にゼロにすることは難しい。だから、一歩一歩確実に、でも迅速に進めていけるよう、私たちも引き続き声を上げていきますし、森文部副大臣をはじめ、放射能対策超党派議員連盟の方のお力もお借りして、子どもたちがいきいきと生きられる未来を守っていきたいと思っています。

今回、このような有意義な交渉の場を設けてくださった 中川文部大臣、森文部副大臣、ありがとうございました! ぜひ、本日の要望を早急に実現いただけるよう、 子ども全国ネットネットワーク団体一同 よろしくお願い申し上げます。


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